東京地方裁判所 昭和60年(特わ)2550号 判決 1985年12月25日
本店所在地
東京都品川区北品川二丁目一八番一号
片山産業株式会社
右代表者代表取締役片山祐男
本籍
愛知県常滑市久米字東郷一〇八番地
住居
東京都目黒区中町二丁目三七番八号
会社役員
片山祐男
昭和二年一〇月一五日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人片山産業株式会社を罰金一八〇〇万円に処する。
被告人片山祐男を懲役一年に処する。
被告人片山祐男に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人片山産業株式会社(以下被告会社という。)は、東京都品川区北品川二丁目一八番一号に本店を置き、遊技場(パチンコ店)の経営を目的とする資本金五〇万円の株式会社であり、被告人片山祐男は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人片山は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外して仮名預金として管理するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五六年八月一日から同五七年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇七八九万三九〇六円(別紙(一)修正貸借対照表参照)あったのにかかわらず、同五七年九月三〇日、東京都港区高輪三丁目一三番二二号所在の所轄品川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三七五五万九〇六〇円でこれに対する法人税額が一四六三万四五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六〇年押第一四一〇号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額四四一七万四八〇〇円と右申告税額との差額二九五四万〇三〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 昭和五七年八月一日から同五八年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三五二〇万三六九八円(別紙(二)修正貸借対照表参照)あったのにかかわらず、同五八年九月二九日、前記品川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四一四〇万九九七〇円でこれに対する法人税額が一六二七万円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五五六六万三五〇〇円と右申告税額との差額三九三九万三五〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の(イ)当公判廷における供述
(ロ)検察官に対する供述調書三通
(ハ)申述書
一 小林倭文子、片山恵史、片山雅之、小川隆央、後藤久人及び谷尾望の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の左記調査書
(イ) 現金調査書
(ロ) 普通預金調査書
(ハ) 積立定期預金調査書
(ニ) 定期預金調査書
(ホ) 代表者勘定調査書
(ヘ) 過払源泉所得税調査書
(ト) 未納事業税調査書
一 登記官作成の商業登記簿謄本
判示第一の事実につき
一 押収してある法人税確定申告書(57/7期)一袋(昭和六〇年押第一四一〇号の1)
判示第二の事実につき
一 収税官吏作成の左記調査書
(イ) 未収利息調査書
(ロ) 立替金調査書
(ハ) 未収源泉所得税調査書
一 押収してある法人税確定申告書(58/7期)一袋(同押号の2)
(法令の適用)
法律に照らすと、被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するので、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額以下において、被告会社を罰金一八〇〇万円に処する。
被告人片山の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、それぞれ所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役一年に処し、後記情状を考慮し、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
(量刑の理由)
本件は、遊技場の経営を目的とし、品川区北品川二丁目にパチンコ店二店を経営する被告会社の代表取締役である被告人が、被告会社の業務に関し、判示のとおり売上を除外するなどの方法により二期分合計で六八九〇万円余の法人税を免れたという事案であり、そのほ脱税額は相当に高額で、ほ脱率も通算で六九パーセントを超えており、被告人の納税意識は稀薄であるといわなければならない。
被告人は、昭和二六年ころからパチンコ店を経営し、同三三年被告会社を設立し、その後二店舗を経営して今日に至っている者であるが、売上除外による小規模の脱税を古くから行っており、同五六年五月以降店舗にフィーバーという機種を導入して以来売上が急増したところから本件のごとき大幅な売上除外による脱税を企図するに至ったものである。
本件脱税の手段・方法をみると、被告人が永年の経営実績に基づき、毎日の売上高(貸玉数に四円を乗じた額)から概算仕入高(景品交換玉数に三円を乗じた額)及びその他経費約三〇万円を差引いた額から、毎日適宜に除外高を決定していたものであるが、公表用の帳簿類の整理・保存も不完全で、所得秘匿の方法も悪質であるといわなければならない。
しかしながら、本件における脱税額は前記のとおりであり、被告人は、本件の発覚後直ちに反省し、捜査及び公判を通じて事実を素直に認め、本件対象年度を含む三年度分について、修正申告のうえ本税及び附帯税並びに地方税をすべて完納しており、さらにあらたに顧問税理士を迎え、その指導によりコンピューター機種を変更して脱税手段に使用しないための方策を用意して今後の再犯なきを誓っていること、また被告人には、昭和二四年に窃盗罪により懲役刑に処せられた以外には前科がないことなど被告人のため斟酌すべき事情も存するので、今回に限り懲役刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑 被告会社につき罰金二〇〇〇万円、被告人につき懲役一年)
出席検察官粂原研二、弁護人神宮壽雄
(裁判官 小泉祐康)
別紙(一) 修正貸借対照表
片山産業株式会社
昭和57年7月31日現在
<省略>
別紙(二) 修正貸借対照表
片山産業株式会社
昭和58年7月31日現在
<省略>
別紙(三)
ほ脱税額計算書
片山産業株式会社
自 昭和56年8月1日
至 昭和57年7月31日
<省略>
自 昭和57年8月1日
至 昭和58年7月31日
<省略>